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【離婚めぐる行政書士の委任契約が無効に!判決確定で「非弁取締まりに大きな影響」!】

残念ながら、行政書士さんが、離婚・相続案件で紛争になってしまっているものにまで介入し(非弁行為。紛争における交渉などは弁護士だけがなしうる業務となっております。)、依頼者に大損させる案件は後を絶ちません。一部の人なのですが、取り締まられることなく、延々とやり続けているのが実情です。

しかも、この事件、最悪なことに、双方代理・利益相反(両方の味方をして、お金を出してくれた依頼者の味方をしなかった)もしています。どんな神経をしているのか、と、珍しく憤慨してしまいます。

以下、弁護士ドットコムニュースから抜粋です。

●子のDNA鑑定めぐるやり取り

確定判決によると事件のあらましは次のようなものだ。福岡県のある夫婦は離婚について話し合い、財産分与や養育費、面会交流などについて取り決めた公正証書を作成した。ところが離婚直前になって、別居していた妻が新たな子を出産。妻がDNA鑑定を嫌がったため、男性は当該行政書士との間で委任契約を結び、報酬27.5万円でDNA鑑定のための諸手続きや、その結果に基づく公正証書の再作成をしてもらうことにした(委任契約①)。

行政書士は妻側に、もし男性の実子と判明すれば1000万円と月30万円の養育費を支払うと提案したが、妻は子どもの父親が男性でないことを告白し、DNA鑑定をしないよう哀願。行政書士は代わりに財産分与などの金額を減らすよう助言し、妻もこれに従ったため、「追い詰めると自殺の可能性もある」などと男性を説得してDNA鑑定をしないという了解を得た。

その後、夫婦は元の公正証書を合意解除し、この行政書士の下で新しい公正証書を作成した。総額は減ったものの、形式上は非実子にも養育費を支払うという内容に男性が不満を漏らしたこともあったが、最終的には「そのままのほうが良い」という行政書士の助言が受け入れられたという。この間、男性は離婚給付契約締結の成功報酬として20万円を支払っている。

●面会交流に向けた助言

新しい公正証書には行政書士の提案で面会交流を1年間猶予し、その後に中立的で公平な第三者の立ち合いの下で協議するという内容が盛り込まれた。男性はこれに基づき1年後、実子との面会交流のため行政書士に相談した。

これを受けて行政書士は妻とも面談。子どもの心情を聞きとってほしいとの意向を聞き取り、男性に報告した。男性は行政書士との間で、実子との面談や面会交流の実現に向けた助言などを行うことについて、報酬15万円で委任契約を結んだ(委任契約②)。

しかし、面会交流は実現せず、男性は調停申立てのため弁護士に依頼した。

●提訴と判決

男性は行政書士を相手取り提訴。委任契約①と②は弁護士法72条に抵触し公序良俗違反で無効だとして支払った62.5万円の返還と、DNA鑑定をしないよう助言されたことで出生を知ってから1年という期限が過ぎ、非実子についての嫡出否認調停ができなくなったとして損害賠償300万円を請求した。

判決は、DNA鑑定についての委任契約①について、子のDNA鑑定をめぐって夫婦間で対立があったことなどから、締結時点で子の嫡出性や離婚に伴う養育費などについて「法的紛議が生じる可能性がほぼ不可避であるような基礎的な事情が存在していた」と指摘。さらにDNA鑑定の実施などについて、妻側との交渉が当然に予想されており、実際に様々な提案をしていることから、弁護士法72条違反と認定した。

面会交流についての委任契約②についても、公正証書で1年後の協議を盛り込んだ時点で、面会交流をめぐって意見の対立が生じる可能性が残っていたことは明らかであり、実際にも対立があったと指摘。元妻側との交渉が当然に予想されていたことから、同様に弁護士法72条違反と認定した。

結果として、委任契約①、②については公序良俗違反で無効として62.5万円の返還が認められた。一方、実子でないことを争う機会を失った点については、行政書士がDNA鑑定を思いとどまらせたことなどは、男性の正当な判断の妨げになるものではなかったなどとして損害賠償を認めなかった。行政書士は控訴したが途中で控訴を取り下げ、判決が確定した。

男性側代理人で非弁問題にくわしい向原栄大朗弁護士は、弁護士以外の士業は裁判所を介した手続きを原則として取れないとした上で、「本件では弁護士が初期から関与していれば、法的に解決できた可能性が高い」と指摘する。

判決が行政書士を「非弁認定」したことについては、「これまで当事者の意思を『代書』しただけと弁解されると追及が困難だったが、その背景にある『交渉』などに踏み込んだ内容」と評価。「非弁取り締まりの実践に影響を与え、困っている人の法的救済につながる」と高く評価した。